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Roger Webster Interview 2019

ブリティッシュ・スタイルのブラスバンドには不可欠なコルネットを演奏し、世界トップ・クラスの奏者として多くの称賛を得ているロジャー・ウェブスター氏。その経歴やコルネットの魅力、また愛奏する〈ベッソン〉の楽器についてなどをうかがいました。
取材:ビュッフェ・クランポン・ジャパン(2019年1月18日・東京にて)

コルネットの魅力を日本の若いプレイヤーに伝えたい

  2週間ほど日本に滞在されて、コンサートやワークショップなど多忙な毎日を送っていらっしゃいました。
ウェブスター(敬称略) 多くの演奏者や音楽ファンの皆さんとお目にかかれましたが、みなさん熱心に楽器を演奏していて、コルネットへの関心が高かったことに喜んでいます。日本にもイギリス流の金管楽器を中心としたブラスバンドが増えているようですね。

  おそらくこれから、コルネットの演奏者もますます増えていくと思います。日本では多くの場合、学校の吹奏楽部に加入し、トランペットを最初に演奏するケースがほとんどだと思います。ウェブスターさんはいかがでしたか。
ウェブスター 楽器との出会いは6歳のときで、最初はピアノを習っていました。しかし兄がすでにコルネットを演奏していましたので、とてもうらやましく思い、10歳になると私もコルネットを手にしたのです。家族にプロの音楽家がいたわけではありませんでしたが、私の暮らしていた北イングランドのヨークシャー地方は伝統的にブラスバンドが盛んで、どの街や村にも必ずブラスバンドがありました。ですからそこで演奏されているコルネットを吹くことに違和感はなかったのです。その頃には将来の選択肢が3つあり、第1はサッカー選手、第2は工場や炭鉱でのけが人を助ける救急隊員、そして第3がブラスバンド。私は音楽に魅力を感じたというわけですね。

  日本では吹奏楽といえば木管楽器も含むウィンドバンドが主流ですけれど、『ブラス!』(Brassed Off、1996年制作)という映画が公開されたことで金管楽器によるブラスバンドや、そこで使われている楽器が注目されました。
ウェブスター  あの映画で描かれた「グリムリー」というバンドが、まさに私が所属している「グライムソープ・コリアリー・バンド」のことで、あの物語は実話に基づいています。私は映画に出演してませんけれど、同僚の何人かは出演しているのですよ。あの映画がヒットしたため、現在でも私たちのバンドは年間たくさんのコンサートをしています。イギリスでは、産業の歴史とブラスバンドがとても密接な関係をもっていますし、現在も数え切れないほどのバンドが活動しているのです。私自身、自分が通っていた学校のバンドを今でも指導していますし、同様のケースは当たり前にあって伝統を受け継いでいます。また、楽器を買う経済的な余裕がなかったり、レッスンを受けられない子供たちを支援するプログラムもあります。私が愛奏している〈ベッソン〉も、そういったプログラムの支援企業ですよ。イギリスにおいて、ブラスバンドは社会の一部なのです。

  10歳でコルネットを手にしたロジャー少年は、当時から練習熱心でしたでしょうか。
ウェブスター もちろん!と答えたいところですが、なかなか上達しないので先生には怒られてばかりいました。当時は「グライムソープ・コリアリー・バンド」のジュニア・バンドへ加入し、楽器を吹くことは好きでしたけれど、今にして思えばもっと練習をすべきでしたよ。実は現在もそうですけれど、ブラスバンドに所属しているほとんどのプレイヤーはアマチュアなのです。学校の先生、医者、学生、工場で働くエンジニア、銀行員……。私のようにプロの音楽家として活動しているのはごく一部で、多くの人は貴重な時間を割いて音楽活動をしています。

  ウェブスターさんがプロになったのは何歳でしたか。
ウェブスター 30歳くらいでした。それまではバイオケミカルの研究所や鉱山に勤務したり、テキスタイルの会社でも仕事をしました。「グライムソープ」のシニア・バンドや「ブラック・ダイク・バンド」などで演奏活動は続けていましたが、音楽は完全に趣味だったのです。ところがそういったバンドは素晴らしい伝統と歴史がありますので、私も先輩方の作り上げたサウンドや輝かしい評価など、偉大な遺産(レガシー)を若い世代の音楽家たちに引き継ぎたくなったのです。そのためにはもっと練習し、楽器との友好関係を深め、努力を重ねないといけないと悟りました。

  定期的に教えている学校もありますか。
ウェブスター マンチェスターにある「王立ノーザン音楽大学(Royal Northern College Of Music)」で25年以上も教えています。音楽はもちろんですが、実は心理学も教えていて、音楽家がステージへ立ったときに心拍数が上がったりストレスを感じたとき、論理的に克服するにはどうすればよいか、といったことをお話ししています。

  日本ではおそらくトランペットを演奏していた人が、コルネットにも興味をもって楽器を手にすることが多いと思います。コルネットの素晴らしさを教えていただけますか。
ウェブスター 大学でもトランペットを吹く学生を教えていますが、コルネットはトランペットに比べると小回りがきく楽器ですから、細かなパッセージなども速く演奏できますし、ブラスバンドでは演奏し続ける時間も音も多いのでスタミナもつきます。もともとトランペットとコルネットは本来の目的が異なりますから、構造も違うのです。トランペットは屋外などで合図を遠くへ知らせる役目を担っていましたから、大きな音が求められる楽器でした。対してコルネットは室内楽的な楽器といいますか。音色もソフトですし音量も抑制されています。

  ブラスバンドやアンサンブルの楽器としても使われますが、ソロ楽器としても協奏曲などの作品がたくさんありますね。
ウェブスター コルネットは19世紀の初頭に生まれた楽器ですが、アーバンという名手(ジャン=バティスト・アルバン。金管楽器の教則本を著したことで有名)が登場し、彼はコルネットのためにベッリーニやヴェルディのオペラをアレンジしたヴィルトゥオーゾの曲などを作曲しました。最初からソロ演奏を要求された楽器でもあったわけです。一方、ブラスバンドで演奏する際には、周囲の音を聴きながらハーモニーやアンサンブル能力を養うのに最適です。イギリスではコルネットの四重奏や、コルネット+ユーフォニアム+テナーホルン+テューバという編成がポピュラーなので、室内楽として楽しむことも多く、コンクールを開催すると多くのグループが集まります。日本でも、もっと盛んになるといいですね。

  生徒さんたちには、どういったことを教えているのでしょうか。
ウェブスター 当たり前のことですが「基礎を大切に」ということ。そしてすぐに高いレベルの演奏を目指そうとせず、ステップ・バイ・ステップという気持ちを忘れずに努力することです。若い人は特に、難しい曲を上手に演奏したいという欲求にかられがちですが、近道を選択すると焦るあまり間違ったテクニックを身に付けてしまい、後悔することがあるのです。たとえば新しい曲の楽譜を手にして、すぐに演奏するのはよくないですね。その前に作曲家の意図を想像したり、聴衆はこの曲に何を期待するのかなどを考えた上で楽器を手にするべきなのです。音楽も楽譜も言葉ですから、まず話す内容を考えないといけません。

  さて、ウェブスターさんは〈ベッソン〉のコルネットを演奏されていますが、どういった特徴があるブランドでしょうか。
ウェブスター “プレスティージュ BE2028”(B♭管)というモデルを演奏しています。市販の状態そのままで、カスタマイズはしていません。とても柔らかな音色の楽器ですから、アンサンブルをする際にも周囲の楽器とうまくブレンドしますし、一音一音は明快ですのでソロ楽器としても素晴らしいと思います。音色の多彩さも特筆すべきでしょうね。〈ベッソン〉というブランドはフランス生まれですが、一時期はロンドンの工場に一流の技術者たちが多数働いており、素晴らしい楽器を生み出しました。現在はドイツが生産の拠点になっていますけれど、イギリスで生産されていた時代の伝統は残されています。現在の技術者たちがそれをしっかりと再現していることには、驚くばかりです。

  ウェブスターさんご自身も楽器の選定をされていますが、購入したい方へアドバイスをいただけますか。
ウェブスター 〈ベッソン〉の個々の楽器のクオリティは非常に高いレベルで均質化されていますので、安心して試奏いただけるでしょう。現在でも優れた技術者たちが手作業で作っている部分が多く、それでも個体差が少ないわけですから、いかに素晴らしいかがわかっていただけると思います。楽器選びを成功させるコツは、まず自分がどういった音を好んでいるか、どういう演奏をしたいのかを、しっかりとイメージすることです。理想的な音を奏でてくれる楽器が、そのプレイヤーにとって最高のパートナーということになるでしょう。これもまた、さきほど申し上げた「練習はステップ・バイ・ステップ」ということにつながりますね。

  トランペットも演奏されていますが、どの楽器をお使いでしょうか。
ウェブスター  〈B&S〉というメーカーの”チャレンジャーⅡ 3137/2“ゴールドブラス(B♭管)というモデルです。息の通りがとてもよく、鼻母音が少ない明快なサウンドですし、明るく華麗な音色も気に入っています。比較的安価だということも素晴らしいのですが、実はイギリスでも知名度においては他のメーカーにやや押されがちなので、私は素晴らしい楽器だということをアピールしたいのです。ブラスバンドで演奏してもいいですし、ベルが他のメーカーの楽器よりもやや小さめなので、オーケストラの中で演奏しても音が大きすぎない。どのような形態のアンサンブルで演奏しても、周囲の音に馴染む音だといえるでしょう。

  また日本にいらっしゃる機会がありましたら、素晴らしい演奏を聴かせてください。
ウェブスター ウェブスター もちそんです。次に来日するときは、コルネットを演奏してくれるプレイヤーがもっと増えているとうれしいですね。

※ ウェブスター氏が使用している楽器の紹介ページは以下をご覧ください。
  コルネット〈ベッソン〉プレスティージュ BE2028
  トランペット〈B&S〉チャレンジャーII 3137/2

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