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牛上隆司のLET’S吹奏楽

〈ベッソン〉ブランド公式ウェブサイト日本版特別企画として、2022年4月より、バンド指導者として全国的に活躍されているユーフォニアム奏者、牛上隆司氏による連載「Let’s 吹奏楽」を、全12回の予定でお届けしています。
Vol.1 「セレナータ」ヤン・ヴァンデルロースト初のユーフォニアム独奏曲をお披露目!はこちら
 
 
Vol.2 コンサートを成功させるには
 
 皆さんこんにちは。5月となり、この時期に定期演奏会を実施している団体ではコンサートが目前に迫っていたり、早いところでは6月に始まる吹奏楽コンクールが迫って来ましたね。まだまだコロナの影響も色濃く、充分な活動が出来ていないバンドが多いのではないでしょうか。そんな中で、コンサートを成功させるコツやバンドのレヴェルを向上させるポイントについて、3月に共演させて頂いた龍谷高等学校(佐賀県)とおかやま山陽高等学校(岡山県)のコンサート・レポートを絡めて語って行きたいと思います。
 
 3月11日に出演させて頂いた龍谷高等学校においては、コロナ感染を防ぐために、何と3月7日まで合奏を禁止されていました。個人練習やパート練習は認められていたようです。それでもコンサートを目前に控えて合奏が出来ないというのは、どれだけ不安で辛い事か、推して知るべしですね。そんな中ですが、私が合流したコンサート2日前には、会場の佐賀市文化会館で精一杯のリハーサルが行われていました。
 
 このコンサート、かなり盛りだくさんで、オープナーやゲストのソロを含めて5曲のクラシックステージ、様々な演出を含めたポップスステージ、「レ・ミゼラブル」を含めた4曲のマーチングステージの3部構成で行われました。特に3部では、演奏が途切れる事なくプログラムが進んで行くように、バックステージでは生徒さん達がテキパキと動き、ステージをスムーズに進行させていたと思います。コロナ対応の中で、良くここまでの準備が出来た物だと感心させられました。
 


龍谷高等学校の定期演奏会。一つのコンサートで舞台配置や衣装を替え、聴衆が最後までコンサートを楽しめるよう工夫を凝らしている。

 
 15日に共演させて頂いた、おかやま山陽高等学校では、実は1月と2月に予定されていたスマイル・サンクス・コンサートを3月5日に延期して実施し、こちらでも別作品で共演させて頂きました。おかやま山陽高等学校においては、部員の大半が音楽コースの専門という事で、コロナ禍においても柔軟な対応がされているように感じました。
 
 定期演奏会では、オープナーとして演奏された「夜明け」(小田実結子)、「セレナータ」(ヤン・ヴァンデルロースト)、「マ・メール・ロア」(モーリス・ラヴェル)が演奏され、極限まで磨かれたサウンドを聴く事が出来ました。
 
 また、後半に演奏された「瑠璃色の地球」では、フルート3名がピアノ伴奏で演奏し始め、客席の目を奪っている間にセッティングが変わっているというマジックのような演出がされていて、お客さんが気づいた時にはステージがすっかり入れ替わっていて、途切れる事なく楽しむ事が出来ました。
 
 どちらのコンサートでも、お客様の体験を大切にする配慮がされていたと思います。これは、一曲一曲のクォリティーを高める努力は元より、コンサート全体を一つの作品として捉え、コンサート丸ごとを楽しんで頂こうとする視点が重要に感じます。その素晴らしい体験を通じて、お客様がそのバンドのファンになって行くのではないでしょうか。
 

おかやま山陽高校の定期演奏会でのセッティング入替えの様子。
 
 吹奏楽のコンサートではありませんが、以前活動していたアンサンブル『ユーフォニアム・カムパニー』のコンサートでも同じように、1回の公演を一つの作品と考えて、プログラミングや演出をしていました。このアンサンブルでは、ユーフォニアム奏者14名というメリハリが付けにくい編成でしたが、同じような音色に終始してお客様に退屈を感じさせないよう工夫し、ステージの上だけでなく、時には花道や客席まで使って演奏しました。これを実現するのは大変で、多くの作品で暗譜が要求され、何度もリハーサルを繰り返しました。
 
 良くある中高生のコンサートでは、一曲一曲の演奏を一生懸命している物の、曲間の流れが悪く、(入れ替わり立ち替わりで担当の生徒さんがステージ前まで出て来て、曲目の紹介や作品の解説を読んだりしてる間、ステージ上の生徒さんが動いたり喋ったりするのが目に付いたり、担当の生徒さんが戻るのにとても時間がかかったり)そうしている間に、お客様の側の緊張感が途切れてしまう事がままあります。担当する生徒さんに問題がある訳では無く、曲間も含めて俯瞰してステージがスムーズに進むように適切に指示して行く事が重要です。
おかやま山陽高校でもステージ転換の練習をする際には、始めは急いで動かそうとするあまり、お互いにぶつかったり楽器をぶつけそうになるなど、危ない事もあるそうです。その際に落ち着いて楽器を動かす事や、テキパキ動作しても急がない事を教えてスムーズに動けるようになって行くそうで、転換も何度も何度も繰り返し練習しています。
 
 コンサートの際は1回の公演を丸ごと体験して貰い、その素敵な体験から吹奏楽のファンを増やして行けたら良いですね。
 

 
三浦徹氏が主宰する『ユーフォニアム・カムパニー』の当時の活動の様子。
 
 さて、そして一曲一曲の演奏のクォリティーを上げるために何をして行けば良いかという、もう一つの大きな課題についてです。
 
 ひと口に演奏のクォリティーを上げましょう。と言っても、何をしたら良いか分からないかたも多いかと思います。
まず誰でも思い付く事ではありますが、楽譜通り演奏出来る様に練習しましょうという事。楽譜に書いてある事が出来ない様では、演奏出来ませんから。ただ、これは楽譜通りに演奏出来る様になればゴールなのか?というと、それは全く間違いです。楽譜通りに演奏出来る様になったところでスタートラインに立てたと考えましょう。
 
 音楽は大変奥の深い世界です。ここからが大変なのです。ここから、どの様に取り組んで行けば良いか、長くなってしまいましたので、次回以降に掘り下げて参りたいと思います。
 
 
Let’s 吹奏楽!

牛上隆司

※ 牛上隆司氏への指導および出演依頼は、最寄りの〈ベッソン〉公認特約店、またはビュッフェ・クランポン・ジャパン ショールームへご用命ください。
※ 牛上隆司氏の経歴と現在の活動はプロフィール、およびインタビュー記事でご確認いただけます。
※ 牛上隆司氏に関する最新情報はFacebookでご覧ください。

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