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牛上隆司のLET’S吹奏楽

〈ベッソン〉ブランド公式ウェブサイト日本版特別企画として、2022年4月より、バンド指導者として全国的に活躍されているユーフォニアム奏者、牛上隆司氏による連載「Let’s 吹奏楽」を、全12回の予定でお届けしています。
 
Vol.1 「セレナータ」ヤン・ヴァンデルロースト初のユーフォニアム独奏曲をお披露目!、はこちら
Vol.2 コンサートを成功させるには、はこちら
Vol.3 演奏のクオリティを上げるための9つのポイント、はこちら
Vol.4 ホール練習!、はこちら
Vol.5 イメージ通りの演奏にするために、はこちら
 

Vol.6 アンサンブルの極意

 
 皆さんこんにちは♪
 
 夏の吹奏楽コンクールが終わって、3年生が引退して世代交代したり、文化祭や定期演奏会に向けて準備を進めている学校も多い事と思います。もちろん、まだまだ支部大会・全国大会に向けての練習に余念のない学校も一部あるとは思います。
 
 これから秋になり、全国的にアンサンブル・コンテストが行われる季節になりますね。必ずしもコンテストのためにという訳では無いのですが、今回のLet’s 吹奏楽では、アンサンブルの何たるかについてお話したいと思います。アンサンブルはフランス語で、「一緒に」とか「同時に」という意味のラテン語insimulから来ていて、一緒に演奏するという意味で使われています。三重奏や五重奏など小編成で演奏する編成を指す「金管アンサンブル」「木管アンサンブル」「弦楽アンサンブル」などという名詞的な使い方もしますが、オーケストラや吹奏楽などの大編成で演奏する中で、周りの奏者とアインザッツやテンポ、音程などを合わせながら演奏する事を「アンサンブルする」などと動詞的に使う事もあります。
 
 今回は、どのようにしてアンサンブルが上手く出来るようになるかという点を中心にお話して行きます。
 
アインザッツ
 
 アインザッツ(Einsatz)はドイツ語で「差し入れる」「投入する」などを意味する言葉ですが、音楽用語では出だしを揃えるという意味で使われる言葉です。
 曲を演奏する中で、曲の冒頭だけで無く様々な場面で出だしを揃えて演奏しなくてはなりません。出だしが揃っていると聴衆に整然とした印象を与える事が出来ます。この時、この瞬間、誰と一緒に出るのか(吹き始めるのか)分かってなければなりません。自分が吹く瞬間、誰と一緒に出るのか分かっていれば、合図を送る事または受ける事が出来ます。そういう意味で、楽譜を理解しておく事が大切です。スコアを読んでおきましょう。
 また合図の仕方ですが、テンポでブレスをすると相手もテンポやタイミングが掴みやすいです。突飛に感じるかも知れませんが、ジャンケンぽんのような要領で合図を送ると分かりやすいです。だいたい皆んなジャンケンは出来ると思います。ジャン・ケン・が予備拍、ポンが1拍目です。曲のテンポでジャンケンをしてみて、ポンの時に吹き始めるよう練習してみましょう。ケンの時にブレスですよ。そうすると上手くタイミングが取れるのでは無いでしょうか?
 
テンポ
 
 テンポは、楽曲の速さですね。テンポ(tempo)はイタリア語で拍の長さ、つまり曲の速さを表わす言葉です。メトロノームを使えば、1分間に何回カチカチとなるか、で正確なテンポを鳴らしてくれます(♩=60なら、1分間に60回、つまり1秒に1回です)。
 楽譜にテンポの数値が書いてあり、メトロノームをこれに合わせて鳴らしながら演奏すれば、正確なテンポで演奏出来るかも知れません。でもコンサートやコンクールでメトロノームを鳴らしながら演奏する訳には行きませんね。ですから、演奏者同士が同じテンポを感じる必要があります。特にアンサンブルでは、指揮者がいませんから、お互いのテンポを合わせる必要があります。(本当は指揮者がいる合奏でも、奏者同士のテンポを合わせる事は大切なのですが…)
 ただ、メトロノームを鳴らしながらの演奏だと、どうしても人間味の無い機会的な演奏になってしまいますね。それは、楽曲の中ではアゴーギク(テンポの揺れによる表現)が必要になる事が多いからです。曲想に応じて向かったり(つまり速くなったり)戻ったり(遅くしたり)、変化をつけながら、でも逸脱しないように演奏して表現しましょう。但し速くし過ぎると「走る」、遅くし過ぎると「停滞する」と言うお叱りを受けます。気をつけましょう!
 
 僕が中高生に指導する際に、テンポの説明をする時は、心の中で胸のところでピンポン玉が弾んでいるところをイメージしてもらいます。そして、そのピンポン玉が奏者同士シンクロして弾んでいるイメージをしてもらうと、お互いのテンポを揃えるイメージがし易いように感じています。もちろん他の方法、テンポで手を叩きながら、各々のパートを歌ってテンポ感を合わせて行く、足踏みしながらでも良いかも知れません。色々方法はあると思いますので、試してみると良いでしょう。
 
音程を合わせる
 
 アインザッツやテンポが合ったら、今度は音程です。音程も、ピッタリと合うと整然とした印象を与え、気持ち良く聴いてもらう事が出来ます。逆に合っていなければ、何やら気持ちの悪い印象を与えてしまいます。アインザッツやテンポが合っていても、音程が合わなければ台無しです。
 僕は、音程の合った時の心地良さを説明するのに、素晴らしい天気の日に美しい景色を見た時のような印象などに例えて説明します。何でも良いのですが、晴れ渡った空をバックにした富士山を見たような気持ちの良さとでも言うか、そんな風にスッキリした印象を感じます。逆に合わない時は、何かおどろおどろしい、気持ちの悪い物や汚い物を見たような気持ちになると言っています。
 
 音には波長というものがあって、音程の合った状態というのは、その波長がピッタリ合った状態です。振動数とも言います。1秒間に何回振動しているかで、振動数が多いと高く、少ないと低く聴こえます。ユニゾンはもちろん、ハーモニーもこの振動数を合わせてやる事で、とても美しく響かせる事が出来る訳です。
 まずは、楽器のチューニングを合わせてやる事で、お互いの音程を合わせ易くなります。しっかりチューニングを合わせて下さい。ただ、チューニングが出来ても、必ずしも相手と合うとは限りません。管楽器の音程は不安定で、温度やその他の要因ですぐに変わってしまいます。逆にコントロールして周りの奏者と合わせながら演奏する事も出来ます。
 お互いを良く聴き、合わせながら演奏する事が大切です。ハーモニーの合わせ方について、詳しく書きたいと思いますが、結構長くなってしまいますので次回以降にしたいと思います。
 
コンテストに向けて
 
 アンサンブル・コンテストにエントリーする際に考えなければならないのは、どの編成で出場するかです。
 まず8名までの編成でなければなりませんね。それから、特に昨今部員数の減って来た学校では、どのような組み合わせでエントリー出来るか、悩まれている先生方も多い事と思います。幾つかの編成を組み合わせてエントリーする事が多いと思いますが、その際、演奏能力が高い生徒を集めた編成を作るのか、演奏能力の高い生徒を分散させて、各アンサンブルの運営が上手くまわるようにするのか、悩ましいところです。
 僕は個人的には、コンテストですから、可能な限り強いチーム(アンサンブル)を一つか二つ作りつつ、他にも組めれば、組めるだけ組んでアンサンブルを勉強させたいと考えます。それが今後、読譜力や合奏力を高める事に繋がると思います。
 
 読譜力と言えば、僕が所属するヴィヴィッド・ブラス・トーキョウでは、8月にVIVID BRASS for KIDsと銘打った子供向けのコンサートを開催しました。このコンサートのために作曲された新曲も披露したのですが、出来立てほやほやの作品を1日だけのリハーサルで、どうして上手く演奏出来るのか、不思議に思われる方もおられるかも知れません。メンバーは、やはりプロ奏者達ですから、読譜力や楽曲の理解力が高い訳です。プロだからというより、プロになって行く過程で勉強して来た事で、そういった能力がついているというのが正確でしょうか。ですから、アマチュアでも中高生でも訓練次第で能力をつける事は出来るでしょう。
 
 そして僕たちヴィヴィッド・ブラス・トーキョウは、9月30日(金)19:00から練馬文化センター 大ホールにて第24回定期公演を開催します。
 今回、僕はヤン・ヴァンデルローストさんに委嘱して3月に初演した「セレナータ」のブラスバンド版の初演でソロを吹く予定です。また、フィリップ・スパーク作曲の「ドラゴンの年」ほか、楽しく聴き応えのあるプログラム目白押しですので、是非お越し下さい♪
会場でお会いしましょう!
 
Let’s 吹奏楽!

牛上隆司

 
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※ 牛上隆司氏への指導および出演依頼は、最寄りの〈ベッソン〉公認特約店、またはビュッフェ・クランポン・ジャパン ショールームへご用命ください。
※ 牛上隆司氏の経歴と現在の活動はプロフィール、およびインタビュー記事でご確認いただけます。
※ 牛上隆司氏に関する最新情報はFacebookでご覧ください。
 
 
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