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牛上隆司のLET’S吹奏楽

〈ベッソン〉ブランド公式ウェブサイト日本版特別企画として、2022年4月より、バンド指導者として全国的に活躍されているユーフォニアム奏者、牛上隆司氏による連載「Let’s 吹奏楽」を、全12回の予定でお届けしています。
 
Vol.1 「セレナータ」ヤン・ヴァンデルロースト初のユーフォニアム独奏曲をお披露目! Vol.2 コンサートを成功させるには Vol.3 演奏のクオリティを上げるための9つのポイント Vol.4 ホール練習! Vol.5 イメージ通りの演奏にするために Vol.6 アンサンブルの極意 Vol.7 ハーモニー(理論編) Vol.8 ハーモニー(実践編) Vol.9奏法の問題-鳴りについて
 
 

Vol.10 奏法の問題-発音とリリース

 
 
皆さんこんにちは。
2022年は、お陰様を持ちまして所沢・高崎・富山の3ヶ所でのリサイタルを好評の内に実施する事が出来、お力添えいただいた皆様、ご来場いただき共に時間を過ごしていただいた皆様に大変感謝しております。
2023年も様々な活動を通して、沢山の皆様と音楽の時間を共有したい所存です。
本年もどうぞ宜しくお願い致します。
 
さて、12月のLet’s 吹奏楽に続き、今回も奏法の基礎的な問題と対処の仕方を取り上げてみましょう。まず発音についてお話してみます。
 
 
発音
 
 発音というのは読んで字の如く、音を発する事です。英語や外国語の発音と同じ表記ですね。
 
 管楽器の場合、まずブレス—— 深く息を吸います。そしてお腹から(息を支えながら)吐く動作と共にアンブシュアのセットをして、タンギングをします。これを発音タンギングと言います、基本Tu – という感じでTの発音をしますが、Du – やRu – などケースバイケースで様々な発音が考えられます。日本語ベースの「ター」や「ツー」だと平板な響きになりやすいので、英語やフランス語などヨーロッパ言語ベースの「Ta-」「Tu-」などの方が豊かな響きが得られやすいです。元々欧米の楽器ですから、その言語に近い方が相応しいのでしょうね。この時のタンギングは、舌を蓋のように使って、金管やフルートでは歯の裏に当てた舌を離す、木管(リード楽器)ではリードに当てた舌を離す動作と同時に息を吹き込んで行きます。これで音が出始めれば、発音成功です。
 
 発音失敗もあります。良くあるのは、息を吹き込む動作の後、音が出ず空気の音だけがスーッとかプスーッと言って音が鳴らないのです。こういった場合は、どこに問題があるのでしょうか?
 
 多くの場合、アンブシュアに問題が起きて音が鳴らない状態になってしまっているのです。先月の回で説明した通り、アンブシュアのセットをしっかりしない限り、どんなに息を送り込んでも音は出ません。唇やリードが鳴る状態にしておかなければならない訳です。
 
 息を吸う前にアンブシュアが出来ていても、ブレスで口を開けて閉じる時に必ずアンブシュアのセットが乱れます。
 
 また、発音タンギングの際に舌だけの動作で良い物が、つい顎も一緒に動いてしまいアンブシュアが乱れてしまうのです。この顎が動いてしまう(楽器の演奏上)悪い動作の事をチューイングと言います。チューインガムのチューイングで、噛む動作の事です。チューイングをしてしまうと、音は出てもトゥオー・トゥオーといったような発音となってしまい、奇妙なニュアンスの音楽表現になってしまいます。動きが酷いと発音に失敗して音が出ない事もあります。ですので、出来るだけ顎が無駄な動きをしないように注意しながら発音する練習をしましょう。
 
 順番に言うと、楽器を構える → 深く息を吸う → アンブシュアのセットを始めながら舌を歯の裏(リード)に当てる → 息を吹き込みながら舌を離す(この時に顎が不必要に動いていないか注意しましょう) → 唇やリードが正常に鳴り始めれば発音成功です!
 
 楽器を演奏する際は、曲の始めだけでなく音が出るフレーズの始めや、ベースや刻みなどでは毎回のように注意しながら演奏しなくてはなりません。もちろん上級者は、それほどストレス無く自然と行っていると思います。何を吹こうとしても発音は必ずするので、避けて通る事が出来ません。発音する毎回が発音練習です。聴く人にとって快適な発音になっているか、いつも意識しながら演奏する事が重要ではないでしょうか。
 
 また金管ではバズィングと言って、マウスピースだけで音を鳴らすのも発音の良い練習になります。(マウスピースでのバズィング練習の場合、ノータンギングで行うと良いです)。但し、注意していただきたいのは、バズィング練習をやり過ぎない事!これは、マウスピースだけで吹く時と楽器をつけて吹く時の状態が大きく違うため、あまりマウスピースだけの練習をし過ぎると違った吹き方を身体に覚えさせてしまう事があるからです。あくまで確認のためにマウスピースだけで吹いてみて、しっかり鳴らせるようなら、すぐに楽器をつけて吹いてみましょう。バズィングでしっかり鳴らせると、より発音がし易くなっている事に気が付くと思います。
 
 発音は、演奏中に何回も繰り返されます。ですので、聴衆にとって発音にストレスが無いか、心地良いか、というのは印象に大きく影響します。ただ、これは発音の部分だけであって、演奏はそれだけではありません。発音が音の出だしであるのに対して、次はリリースのお話をしましょう。
 
 
リリース
 
 リリースというのは、辞書を調べると「解放」「釈放」「放出」などと「解除」という意味が出て来ます。楽器演奏上の意味では、音を切る時に使われるので、解除が近い意味かも知れませんね。
 
 音を切る際に、どのような動作をするか少し考えてみましょう。このリリースも聴衆に与える印象に大きな影響を与えます。せっかく上手く発音出来て、安定した音を響かせていたのに、リリースがプツッと切れたり、最後に音程が下がってしまったり逆に上がってしまったりすると、あららら…みたいな残念な印象になってしまいます。ですので、綺麗なリリースが出来るよう、これも練習が必要ですね。
 
 真っ直ぐ強い音のままリリースなのか、ディミヌエンドしながら消えて行くのか、音楽表現によって様々ですが、それぞれ上手く出来るように練習が必要です。
 
 ロングトーンで、クレッシェンド・デクレッシェンドして最後に消える練習は、結構効果的だと思います。拙著の999秒の実践的で効果的なエクササイズでは、第1章のインターバルでこれに近い練習が出来ます。宜しければ使ってみて下さい。
 

拙著:999秒の実践的で効果的なエクササイズ(風の音ミュージックパブリッシング)
金管楽器のウォーミングアップやインターバル、リップスラー、タンギングなどを纏めたエチュード(トランペット・ホルン・トロンボーン・ユーフォニアム・テューバ各版)。

 

現在このエチュードの練習を合奏で出来る「999秒の実践的で効果的なエクササイズ合奏版」(写真)も出版されています。
 
 
 例えば金管でクレッシェンドの際、息の量を増やして行きますね。その時に息が出て行くアパーチュアの大きさが変わらなければ、息のスピードが上がって行き、音程が高くなって行きます。逆にデクレッシェンドの際に、息の量を減らして行くのにアパーチュアの大きさが変わらなければ、息のスピードが落ちて音程が下がって行きます。息の量を増やしたり減らしたりした時に、それに合わせてアパーチュアを開いたり狭めたりして、息のスピードを保つ事が音程を維持するために必要な訳です。その加減を発音からクレッシェンド・デクレッシェンド・リリースの練習の中で覚えて行く事が、必要不可欠な訳です。
 
 舌を使って音を止めるのは、基本的にクラシックの世界ではご法度です。響きが残らず不自然な印象となってしまうため、舌を使って止める癖のある人は、舌を使わずにリリース出来るよう徹底的に練習しましょう!(ジャズの世界では、ダッ・ダッだという感じで舌で止める奏法は一般的に良く行われます)
 
 常日頃から、この様な基礎的な練習を繰り返し行う事で、聴く人にとって心地良く、吹く人にとってもストレス無く演奏出来るようにして、皆さんがより多くの人々に素敵な演奏を届けられるようになれる事を願っています。
 
Let’s 吹奏楽!

牛上隆司

 
 
※ 牛上隆司氏への指導および出演依頼は、最寄りの〈ベッソン〉公認特約店、またはビュッフェ・クランポン・ジャパン ショールームへご用命ください。
※ 牛上隆司氏の経歴と現在の活動はプロフィール、およびインタビュー記事でご確認いただけます。
※ 牛上隆司氏に関する最新情報はFacebookでご覧ください。
 
 
牛上隆司のLet’s 吹奏楽
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Vol.2 コンサートを成功させるには
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Vol.5 イメージ通りの演奏にするために
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Vol.10 奏法の問題-発音とリリース(現在閲覧されている記事)

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